小規模宅地等の特例をわかりやすく解説|自宅の土地が最大80%減額
公開日:2026-08-05 執筆:相続税理士ナビ編集部
「実家の土地の評価額が高くて、相続税が払えないかもしれない」——自宅を相続する方に多い不安です。この不安に応える制度が小規模宅地等の特例です。要件を満たせば、自宅の土地は330㎡までの部分について評価額が80%減額されます(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。たとえば評価額5,000万円の土地なら、1,000万円まで下がる計算です。ただし、誰でも使えるわけではありません。取得する人ごとに細かな要件があり、申告手続きも必要です。この記事では、特例の仕組み・対象となる宅地の類型・自宅に適用する場合の要件・見落としやすい注意点を、国税庁の情報をもとに整理します。
小規模宅地等の特例とは?評価額が最大80%減額される制度
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方(被相続人)やその生計を一にする親族が、居住や事業に使っていた宅地等について、限度面積までの部分の相続税評価額を50%または80%減額できる制度です(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。
インパクトを一般例で見てみましょう(令和7年4月1日現在の法令に基づく試算です)。
一般例: 自宅の土地の評価額5,000万円・面積300㎡(330㎡以内)の場合 特定居住用宅地等として80%減額 → 5,000万円 ×(1 − 0.8)= 1,000万円
課税の対象となる土地の価額が4,000万円分も変わるため、相続税がかかるかどうかの分かれ目である相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数。令和7年4月1日現在法令等。出典: 国税庁タックスアンサー No.4102)との比較にも大きく影響します。
なお、減額の前提となる評価額そのものの計算方法は土地の相続税評価額の調べ方で解説しています。あわせてお読みください。
対象となる宅地は大きく3類型|限度面積と減額割合の一覧
特例の対象となる宅地は、使われ方によって次のように区分されます(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124。令和7年4月1日現在法令等)。
| 区分 | 主な例 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 被相続人等が住んでいた自宅の土地 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 被相続人等が事業に使っていた土地(店舗など) | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 一定の同族会社の事業に使われていた土地 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 賃貸アパートの敷地など貸付用の土地 | 200㎡ | 50% |
大きくとらえると、自宅(居住用)・事業用・貸付用の3類型です。
複数の宅地がある場合は併用もできます。貸付事業用宅地等を選択しない場合は、居住用330㎡と事業用400㎡をそれぞれ適用でき、合計で最大730㎡まで対象になります。一方、貸付事業用宅地等を含めて選択する場合は、限度面積の調整計算が必要です(後述の注意点③)。
自宅(特定居住用宅地等)の適用要件|配偶者・同居親族・「家なき子」
自宅の土地に80%減額を適用できるかどうかは、誰がその土地を取得するかで要件が変わります(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。
配偶者が取得する場合
配偶者には取得者ごとの要件がありません。被相続人の自宅の土地を配偶者が取得すれば、居住や保有の継続要件を問われずに特例の対象となります(申告などの手続きは必要です)。
同居していた親族が取得する場合
被相続人と同じ一棟の建物に住んでいた親族が取得する場合は、次の2つを満たす必要があります。
- 相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に居住していること
- その宅地等を相続開始時から申告期限まで保有していること
別居の親族(いわゆる「家なき子」)が取得する場合
被相続人に配偶者も同居の相続人もいないケースでは、別居の親族でも一定の要件を満たせば適用できます。通称「家なき子」と呼ばれる要件で、主なものは次のとおりです。
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前に、被相続人の自宅に同居していた相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に、自分・自分の配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人の持ち家(日本国内)に住んだことがないこと
- 相続開始時に住んでいる家屋を、過去に自分が所有していたことがないこと
- その宅地等を相続開始時から申告期限まで保有していること
- 国籍・納税義務者区分に関する一定の要件を満たすこと
「賃貸住まいの子が実家を相続する」ケースが典型ですが、上記のとおり要件は細かく、持ち家の履歴によっては使えない場合があります。
老人ホームに入所していた場合: 被相続人が老人ホーム等に入所していて自宅を離れていた場合でも、要介護認定・要支援認定等の一定の事由があれば、その自宅の土地は「被相続人の居住の用」に含まれ、特例の対象になり得ます(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。
見落としやすい注意点3つ|申告しないと適用されない
①相続税の申告をしなければ使えない
この特例は、相続税の申告書に適用を受ける旨を記載し、計算明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付して提出することが必要です(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。特例の適用で税額が0円になる場合でも、申告そのものは必要です。
申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(出典: 国税庁タックスアンサー No.4102)。期限の数え方や間に合わないときの対処は相続税の申告期限(10ヶ月)の解説記事をご覧ください。
②遺産分割が決まっていることが原則
特例の対象となる宅地等は、申告期限までに遺産分割が済んでいることが原則です。誰がその土地を取得するかで要件判定が変わるためです。未分割のまま申告期限を迎える場合の扱いは国税庁も別途案内しており、所定の手続きをしたうえで一定期間内に分割されれば、後から適用を受けられる場合があります(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。分割協議が長引きそうなときは早めに専門家へ相談しましょう。
③併用するときは面積の調整計算がある
貸付事業用宅地等を含めて特例を選択する場合は、次の算式による限度面積の判定が必要です(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。
特定事業用等の面積 × 200/400 + 特定居住用の面積 × 200/330 + 貸付事業用の面積 ≦ 200㎡
どの宅地に適用するかの選択によって減額される金額が変わるため、複数の土地がある場合は慎重な検討が必要です。
適用ミスの典型例と税額への影響
実務でつまずきやすいのは、次のようなパターンです。
- 「家なき子」要件の見落とし: 相続開始前3年以内に配偶者や親族の持ち家に住んでいた、過去に今の住まいを所有していた——などの理由で要件を満たさないケース
- 申告期限前の売却: 同居親族や別居親族が取得する場合は申告期限までの保有が要件のため、期限前に売却すると適用できなくなるケース
- 併用時の選択の検討不足: 複数の宅地のどれに適用するかの選択で、減額される金額が変わることに気づかないケース
税額への影響も小さくありません。先ほどの一般例のように評価額5,000万円の土地が1,000万円になれば、課税価格は4,000万円変わります。相続税の税率は10%〜55%の累進です(令和7年4月1日現在法令等。出典: 国税庁タックスアンサー No.4155)ので、特例を適用できるかどうかで税額に大きな差が生じる場合があります。
特例の適用判断に迷ったら税理士に相談を
小規模宅地等の特例は減額の効果が大きい一方、次のように個別の事情によって結論が変わりやすい制度です。
- 同居や居住実態の判定(住民票だけでは判断できません)
- 老人ホーム入所・二世帯住宅など、判断が分かれやすいケースへの当てはめ
- 複数の宅地がある場合に、どの宅地へ適用するかの選択
要件を満たすかどうか微妙な場合や、対象になりそうな土地が複数ある場合は、一般論だけで判断せず、相続に強い税理士に確認するのが確実です。専門家に頼むべきか迷っている段階なら、税理士必要度診断で目安を確認できます。依頼を検討する場合は相続に強い税理士の選び方も参考にしてください。
小規模宅地等の特例に関するよくある質問
Q1. 特例を使えば相続税は0円になりますか?
評価額の減額によって遺産総額が基礎控除以下になれば、結果として相続税がかからないケースはあります。ただしその場合でも、特例の適用には相続税の申告が必要です(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。「税額0円=何もしなくてよい」ではない点にご注意ください。
Q2. 亡くなった親が老人ホームに入所していた場合も対象になりますか?
要介護認定・要支援認定等を受けて一定の施設(特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など)に入所していた場合は、もとの自宅の土地が特例の対象になり得ます(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。入所の経緯や自宅の利用状況によって判断が分かれるため、個別のケースは専門家にご確認ください。
Q3. 賃貸アパートの土地にも使えますか?
貸付事業用宅地等として、200㎡まで50%減額の対象になり得ます(出典: 国税庁タックスアンサー No.4124)。ただし事業継続・保有継続などの要件があり、自宅の土地と併用する場合は面積の調整計算も必要です。
まとめ|要件確認と期限内の申告がカギ
- 小規模宅地等の特例は、自宅の土地なら330㎡まで評価額80%減額(要件を満たす場合)
- 取得者が配偶者か、同居親族か、別居親族(家なき子)かで要件が異なる
- 申告しないと適用されない。税額0円でも10か月以内の申告が必要
適用できるかどうかの判断は、居住実態や取得者の状況によって変わります。「自分のケースで使えるのか」が少しでも不安な場合は、早めに相続に強い税理士等の専門家へ確認しておくと安心です。
相続税の申告や対策は、相続に強い税理士への相談が近道です。
紹介・相談は無料。複数の税理士を比較してから決められます。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務助言ではありません。制度は改正されることがあります。実際の判断は税理士等の専門家にご確認ください。