相続手続きの流れを時系列で解説|期限一覧チェックリスト付き
公開日:2026-08-05 執筆:相続税理士ナビ編集部
身近な方が亡くなると、悲しむ間もないまま、たくさんの手続きが一度に押し寄せます。「何から手をつければいいのか分からない」というのが、多くの方の実感ではないでしょうか。相続手続きは、期限の早いものから順に進めるのが基本です。この記事では、死亡直後の届出から、相続放棄、準確定申告、相続税申告、相続登記まで、相続手続きの流れを時系列で整理しました。期限一覧のチェックリストとしてもお使いいただけます。
相続手続きの全体像 — 期限マップ
まずは全体像です。主な手続きと期限を時系列で並べると、次のようになります(各期限の根拠・出典は、この後の各章に記載しています)。
| 期限(原則) | 手続き | 主な窓口 |
|---|---|---|
| 7日以内 | 死亡届の提出 | 市区町村 |
| 10日以内 | 年金受給権者死亡届(厚生年金) | 年金事務所 |
| 14日以内 | 年金受給権者死亡届(国民年金)・国民健康保険の届出 | 年金事務所・市区町村 |
| 3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認の申述 | 家庭裁判所 |
| 4ヶ月以内 | 準確定申告(亡くなった方の所得税の申告) | 税務署 |
| 10ヶ月以内 | 相続税の申告・納税 | 税務署 |
| 3年以内 | 相続登記(不動産の名義変更) | 法務局 |
注意したいのは、起算日が手続きごとに異なることです。「死亡の事実を知った日」「相続の開始があったことを知った日の翌日」など、それぞれの数え方は各章で説明します。
ご自身のケースで必要な手続きだけを整理したい方は、相続手続き診断で期限つきのチェックリストを確認できます。
死亡直後〜14日以内にやること
死亡届の提出(7日以内)
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなった場合は、知った日から3ヶ月以内)に提出します。届出先は、亡くなった場所・本籍地または届出人の所在地の市区町村役場で、死亡診断書または死体検案書を1通添付します。手数料はかかりません(出典: 法務省「死亡届」)。実務上は、死亡届の提出とあわせて火葬(埋葬)許可の申請を行うのが通例です。
年金の手続き(10日・14日以内)
年金を受け取っていた方が亡くなった場合は、「年金受給権者死亡届」の提出が必要です。期限は厚生年金が死亡日から10日以内、国民年金が14日以内です(出典: 日本年金機構 よくあるご質問)。
日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、原則として死亡届の提出を省略できます。ただしその場合でも、未支給年金(まだ受け取っていない分と亡くなった月の分までの年金)があるときは、生計を同じくしていた遺族による請求手続きが別途必要です(出典: 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」)。
健康保険の手続き(14日以内)
国民健康保険の被保険者が亡くなったときは、世帯主が14日以内に市区町村へ資格に関する届出を行います(出典: 堺市「こんなときは14日以内に届出を」)。窓口の名称や必要書類は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の案内でご確認ください。
3ヶ月以内 — 相続放棄・限定承認を判断する
亡くなった方に借金や保証債務などマイナスの財産がある場合は、相続放棄を検討します。相続放棄の申述は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ行います。費用は申述人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手で、申述書のほか、被相続人の住民票除票(または戸籍附票)、申述人の戸籍謄本などが必要です(出典: 裁判所「相続の放棄の申述」)。
ポイントは次の3点です。
- 起算点は死亡日ではなく「知ったとき」です。疎遠だった親族の相続を後から知った場合は、知った時点から3ヶ月を数えます
- 3ヶ月の熟慮期間は、家庭裁判所への申立てにより伸長が認められる場合があります
- プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ限定承認という方法もあります(同じく3ヶ月以内の申述が必要です)
放棄するかどうかを判断するには、預貯金や不動産だけでなく、借入金まで含めた財産調査を早い段階で進めることが大切です。
4ヶ月以内 — 準確定申告
準確定申告(亡くなった方のその年の所得税の申告)は、相続人が代わりに行う手続きです。1月1日から死亡日までの所得と税額を計算し、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、被相続人の死亡当時の納税地を所轄する税務署へ申告・納税します(出典: 国税庁タックスアンサー No.2022)。
- 対象になりやすいのは、事業所得や不動産所得があるなど、生前に確定申告をしていた方です
- 相続人が2人以上いる場合は、全員の連署で1通を提出するか、それぞれが別々に提出します(別々に提出した場合は、他の相続人に申告内容を通知する義務があります)
10ヶ月以内 — 遺産分割協議と相続税の申告・納税
四十九日が過ぎた頃からは、遺産の評価と遺産分割協議(誰がどの財産を引き継ぐかの話し合い)を進めます。相続税の申告が必要かどうかは、遺産総額が基礎控除額を超えるかで決まります。判定の仕方は相続税の基礎控除の解説記事で確認できます。
申告が必要な場合、相続税の申告・納税の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」で、提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署です(出典: 国税庁タックスアンサー No.4205)。遺産分割がまとまらなくても期限は延長されず、その場合は法定相続分でいったん申告する仕組みになっています(出典: 国税庁タックスアンサー No.4208)。
期限の詳しい数え方や、間に合わないときの対処(延納・物納など)は、相続税の申告期限の解説記事で説明しています。
その後 — 相続登記(3年以内)と各種名義変更
不動産を相続した場合の相続登記は、令和6年(2024年)4月1日から義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(出典: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。
- 義務化より前に相続した未登記の不動産も対象で、令和9年(2027年)3月31日までに登記が必要です
- 遺産分割がまとまらない場合は、「相続人申告登記」(登記簿上の所有者の相続人である旨を法務局へ申し出る手続き)により、ひとまず義務を果たすことができます。ただし、これは不動産の名義変更(所有権移転の登記)そのものではありません
預貯金・証券・自動車などの名義変更も、遺産分割の内容が決まり次第、順次進めましょう。
専門家の使い分け — 税理士・司法書士・弁護士
相続手続きは、分野ごとに担当する専門家が異なります。一般的な役割分担は次のとおりです。
| 専門家 | 主に依頼できること |
|---|---|
| 税理士 | 準確定申告・相続税申告・財産評価 |
| 司法書士 | 相続登記(不動産の名義変更) |
| 弁護士 | 遺産分割で争いがある場合の交渉・調停 |
どの専門家に、どの順番で相談するかはケースによって異なります。迷う場合は、相続手続き診断で、ご自身の状況に応じて必要な手続きと相談先の目安を確認するところから始めてみてください。
相続手続きに関するよくある質問
Q. 期限はすべて「死亡日」から数えますか?
A. いいえ、起算点は手続きごとに異なります。死亡届は「死亡の事実を知った日」、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」、準確定申告と相続税申告は「相続の開始があったことを知った日の翌日」が起算点です。同居の家族なら実質的に死亡日基準と変わらないことが多い一方、離れて暮らす相続人は起算日がずれる場合があります。
Q. 遺産分割がまとまらないまま相続税の申告期限が来たら、どうなりますか?
A. 申告期限は延長されません。各相続人が法定相続分で財産を取得したものとして、いったん申告・納税する仕組みになっています(出典: 国税庁タックスアンサー No.4208)。
Q. 昔の相続で名義変更していない不動産も、相続登記の義務化の対象ですか?
A. はい。義務化(令和6年4月1日)より前に相続した未登記の不動産も対象で、令和9年(2027年)3月31日までに登記が必要です(出典: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。手続きの進め方に迷う場合は、司法書士など専門家にご確認ください。
相続税の申告や対策は、相続に強い税理士への相談が近道です。
紹介・相談は無料。複数の税理士を比較してから決められます。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務助言ではありません。制度は改正されることがあります。実際の判断は税理士等の専門家にご確認ください。